技術コラム

JHIの社員がつづる、
テクノロジーコラムです。
ホース配管製品の製造やそれに関係する技術について
書き留めたコラムです。

AM(3D積層造形)

AMコラム第2回 『AM(Additive Manufacturing)取組み』について

3Dプリンター本体、ARGO500に関する紹介

図1.ARGO500造形風景.jpg

図1. ARGO500 造形風景

 ARGO500は、イタリアのRoboze社によって製造されている3Dプリンターです。大型の造形範囲を有し、大型部品から多量のバッチ生産を選択できます。スーパーエンプラの造形が可能で、金属部品の代替を狙っています。

 JHIではRoboze社の3Dプリンター、ARGO500を使用した各種造形を行っています。FDM方式の3Dプリンターで、中空構造かつ複雑形状の造形が可能です。ARGO500の主な特徴は下記の通りです。

▶ X500*Y500*Z500の造形エリア。
▶ XY軸の移動がラック&ピニオン方式で正確な動作。
▶ 最大180℃のヒートチャンバーを搭載。
▶ 最大450℃のノズル温度でスーパーエンジニアリングプラスチックに対応。
▶ 加熱可能な材料保管庫を搭載し材料品質を維持。

 ARGO500はX500*Y500*Z500の造形エリアを有しており、3Dプリンターの中でも大きな造形エリアを有しております。これを利用して大型部品の造形や、小型部品を大量に並べたバッチ造形が可能であり、生産方法の多角化が可能です。大型機というと生産性の都合から積層ピッチが大き目の機種が目立ちますが、ARGO500は225μmの積層ピッチを標準として大型部品の造形が可能です。造形サイズと精細さを兼ねた造形が実施できます。

 ARGO500は他メーカーとは異なり、XY軸の動作がベルト駆動でなくラック&ピニオンによる駆動を採用しています。ベルト駆動ではノズルヘッドの慣性力によるズレ、ベルトのたわみによる誤差、ベルトの滑りといった精度悪化の要因があります。ARGO500のラック&ピニオンではベルト駆動における精度悪化の要因を排除し正確なノズルヘッドの動作が行えるため、外形品質の高い造形が可能です。ヘリカルギアを採用しているところもあり、ノズルヘッドの駆動に対するメーカーのこだわりが感じられます。

 ARGO500は造形エリアの雰囲気温度を高くするための、ヒートチャンバー機能を搭載しています。雰囲気温度を高くすることで、熱収縮による造形品の反りや寸法変化を抑制し、高品質な造形を可能としています。また徐冷することで、結晶性樹脂において結晶化度が大きくなり造形品の強度向上を実現します。

 ARGO500は最大450℃まで加熱可能なノズルを使用できます。これにより、PEEKやULTEM(PEI)といったスーパーエンジニアリングプラスチックの造形が可能です。ヒーターからノズル先端までのクリアランスが小さいため、吐出までに樹脂に加わる熱を最小としています。樹脂材料の送り機構がノズル付近に設置されているため、熱可塑性TPUのような折れ曲がりやすい軟質材料の造形も容易に可能です。

 ARGO500では、供給する材料の品質を維持するため、専用の保管庫を設けています。保管庫は最大100℃まで加熱可能で、造形前および造形中に材料を加熱することで材料の乾燥状態を維持します。材料の吸湿がある場合、造形品質の悪化もしくは吐出不良などの不具合を引き起こす可能性があります。このようなトラブルを回避する目的で専用の保管庫が搭載されています。数日にわたる造形であっても、造形中における吸湿を回避し安定した造形を実現しています。

 3Dプリンターというと中国やアメリカ、ドイツといった国家が目立ちますが、弊社保有のRoboze社はイタリアのメーカーとなります。ARGO500は日本ステレオタイプにおけるイタリア製の典型例で、端麗な外観は他のメーカーとは明らかに異なります。Roboze社のイメージカラーがブルーであるためか、装置には眩しいブルーの間接照明で飾られています。スタイリッシュな扉にはハンドルが無く、開閉が面倒なところまでイタリアの影響が感じられます。3Dプリンター本体の仕上がりは茶目っ気たっぷりでありますが、実際の造形品については高品質そのものです。高品質の理由の第1は、ヒートチャンバー搭載があります。低価格帯では温度調整機構なしもしくは加熱可能なビルドプレートのみであり、造形品全体の温度調整機能に比べると反りや寸法の安定性に難があります。特に結晶性樹脂については、冷却時間が異なることにより強度面で大きな違いが生じます。材料が同じなに3Dプリンターによって強度が異なるのは、結晶化度の違いによる可能性があります。第2にラック&ピニオン方式です。明らかに角部の品質、エッヂの立ち方が良好です。弊社ではMarkforged社のX7も保有しており、こちらはベルト駆動となるためよく比較を行います。テストピースにピラミッド形状を作るとき、X7も良好な仕上がりで評判なのですが、ARGO500の角の立ち方と比較すると違いは明らかです。実のところこのような角が丸くなりやすいことから、3Dプリンターでは四角形状が苦手であったりします。しかしARGO500では四角形状も美しく再現することが可能です。

図2.テストピース.jpg

図2.テストピース

 またARGO500ではスーパーエンジニアリングプラスチックの利用が可能です。特にRoboze社はスーパーエンジニアリングプラスチックの開発に注力しているおかげで、PEEKやCF-PEEKの造形の品質や歩留まりが高く安心して造形に取り組めます。他にも純正材料のラインナップが豊富で、材料チョイスを考えながら設計するのがとても楽しいです。

 JHIでは各種3Dプリンターを使用した造形を承っております。設計から解析、データ作成、検査等の技術支援を併せた提案により、お客様に最良の提案をいたします。設計のみ解析のみといった個々の依頼についても承ります。

ご用命の際はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

◇『AM(Additive Manufacturing)取組み』過去連載記事

 ・AMコラム第1回

◇その他「AM関連」ページ

 ・AMページ
 ・一般社団法人日本チタン協会の発行誌「チタン」2022年10月号(Vol.70、 No.4) 『金属AMを使用した薄肉チタン配管の造形姿勢の改良』について研究報告記事

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